今回お届けするのは、
“Graveyard Leather Garments(以下:GYLG)” デザイナー・Jesseさんへのインタビュー。
革ジャンという存在にどう向き合い、どのような哲学を持っているのか。
その言葉を、できるだけそのままの温度でまとめています。
じっくりと読み進める中で、GYLGの世界観にも触れていただけたらと思います。
スタンス|なぜ語るのか
まずは、今回のインタビューに至った背景から。
普段、Jesseさんはメディアに出ることがほとんどありません。
それは単に露出を控えているというよりも、ファッションメディアそのものに対するスタンスがあるからです。
一方で、SNSでは業界やユーザーに向けて、率直な言葉を投げかけ続けています。
なぜ語るのか。
そして、なぜ語らないのか。
その両方を起点に、今回のインタビューは始まりました。
(※敬称略)KENGO:
普段メディアにはあまり出られていませんが、インタビューを受けること自体にどんなスタンスをお持ちですか?
Jesse:
ファッション系のメディアに対しては懐疑的ですし、自分には必要無いというスタンスなので。
KENGOさんからのお話じゃなければ、受けていないと思います。
話のディティールが通じる方と会話ができる機会なので、今回は嬉しく思っています。
KENGO:
恐縮です。ありがとうございます。
SNSでは業界や革ジャンユーザーに対して、かなりストレートな発信をされていますよね。
ああいった発信を続けている理由は何でしょうか?
Jesse:
批判や否定をしたいわけではないんですが、業界自体が飽和状態になっているとは感じています。
そして(ブランドが)価値を作っていく過程で、打ち出し方に違和感というか、疑問に思う部分が増えてきて。
作り手側の責任について、考える機会が増えたのが理由だと思います。
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Jesseさんの発信は、時に強く感じることもあります。
ただその言葉にはバックボーンがあり、不思議と納得してしまう部分も多い。
作り手とユーザー、両方に対して緊張感を生む存在。
それが、GYLGというブランドの現在地なのかもしれません。
Jesse:
SNSを戦略的にやっているわけではないんですよ。
四六時中デザインのことを考えているので、その時に思ったことを書いている感じです。
根っこの部分にはああいう考えはありますけど、歳を重ねて少し落ち着いたところもあるので。
悪ノリでやっている部分もありますね(笑)
原点|なぜ革ジャンなのか
ここからは、少し時間を遡ります。
なぜここまで革ジャンに惹かれ続けているのか。
その原点について伺いました。
KENGO:
Jesseさんが、ここまで革ジャンに惹かれ続けている理由は何だと思いますか?
Jesse:
やっぱり初期衝動が一番大きいと思いますね。
90年代初頭、10代の頃に見た夜中のMTV。
あの辺りが原点です。
そこからバイクにも興味を持って、気づけば30年近く経っていますけど、いまだに革ジャン、特にライダースジャケットに魅了されています。
革ジャンを見ると、頭の中でRockが流れて、焼けたオイルの匂いがするような感覚があるんですよ。
黒い革ジャンって、自分の中ではそういう存在なんです。
KENGO:
本能的に惹かれている感覚なんですね。
その表現、まさにGYLGの革ジャンそのものだと感じました。
ちなみに、初めて買った革ジャンは覚えていますか?
Jesse:
中学生の時に古着屋で買った、白タグのショット(ワンスター)ですね。
何も知らないまま、ワンスター着てチャリンコ乗ってました(笑)
KENGO:
そこからアメリカンタイプにハマっていったんですか?
Jesse:
ロンジャンを知ったのは16歳くらいですね。
パンクのリバイバルがあった時期で、雑誌でルイスレザーを見て知りました。
その流れで、最初のロンジャンを買ったと思います。
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革ジャンと音楽。
そしてバイク。
それぞれが独立しているのではなく、ひとつの感覚として繋がっている。
その“原点”が、いまのものづくりにも色濃く影響しているように感じました。
過去|LOADEDという経験
ここからは、これまでのキャリアについて。
GYLGの背景には、過去に手がけていたブランド“LOADED(ローデッド)”の存在があります。
その経験が、現在のものづくりにどのように繋がっているのかを伺いました。
KENGO:
10年以上前に手がけていたLOADEDですが、今振り返ってどのように感じていますか?
Jesse:
今振り返ってみても、良いブランドだったと思います。
2013年に自分が大病を患ってしまって、活動を停止することになったんですが。
あのテイストは唯一無二だったと思いますね。
生地と縫製がXX仕様のスキニージーンズが一番人気だったんですけど。
ああいうものは当時、たぶんウチしかやってなかったと思います。
レザーも、オリジナルレザーやディアスキン、ホースハイドなど、いろんなバリエーションをリリースしていて、毎回ほぼ即完でした。
レザーを扱う上での経験値は、LOADEDでかなり積んだと思います。
KENGO:
GYLGの原点とも言える存在ですね。
ではLOADEDとGYLGを比べたとき、アップデートしている部分はどこになりますか?
Jesse:
基本的にはそんなに変わっていないですね。
ただ30代前半の自分と今の自分では、やっぱり色々変わってきているので。
世代的な価値観も含めて。
イメージとしては、ちょっとマイルドになったLOADEDって感じです(笑)
KENGO:
なるほど(笑)
トレンドについてはどう捉えていますか?
Jesse:
トレンドはすごく見ています。
その中で、自分に必要か不要かはちゃんと選別していますね。
全部がダメだとは思っていないです。
流行りに乗るつもりはないし、それを作る気もない。
ですが、時代感として必要な部分はあると思っています。
今は、より普遍的なものを作ろうとしている感覚ですね。
自分のスタイリングの影響も大きいと思います。
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変わらない軸と、変化していく感覚。
その両方を受け入れながら、“いまの自分にとっての普遍”を探っている。
そのスタンスが、現在のGYLGに繋がっているように感じました。
思考|ものづくりの基準
ここからは、GYLGというブランドの“核”にあたる部分。
何を作るのかではなく、「どう考えて作っているのか」。
その基準について伺いました。
KENGO:
GYLGを立ち上げる際に、「これは絶対にやらない」と決めていたことはありますか?
Jesse:
まず、自分が納得していないものは売らない。
これが一番ですね。
デザインにしても、ものづくりにしても、お金を払っていただく以上、責任があるので。
中途半端なものは作れない、というのが前提にあります。
あとは“付加価値をつけるために余計なことはしない”、という点ですね。
KENGO:
「付加価値をつけるために余計なことをしない」というのは、どういう意味でしょうか?
Jesse:
誇大広告にならないようにしている、ということです。
最近は、鞣し方とか染め方とか、本来は作り手にとって、“普通の工程”が売り文句になっていることが多くて。
ここ10年くらい、そういう部分に違和感をもっています。
そういう打ち出し方は、自分としてはやりたくないですね。
KENGO:
では、GYLGの革ジャンを通して、着る人に一番伝えたい感覚は何でしょうか?
Jesse:
“普通”を一回試してみてほしい、ということですね。
どの基準で“普通”と捉えているのかは、一度袖を通してもらえれば分かると思います。
これ以上のものはなかなか無いと思っていますし、これ以下のものに自分の名前をつけて商売することはできないので。
商品に対するプライドを感じてもらえたら嬉しいです。
KENGO:
その“普通”という言葉、かなり印象的です。
可能な範囲で言語化していただくことはできますか?
Jesse:
“お金を払う価値がある革ジャン”っていうことですね。
銀面が強くて、経年変化して、長く付き合える。
そこに加えて、形がいい。
それが自分の考える“普通”ですね。
もともとヴィンテージが好きなんですけど、当時のパターンって、着丈が短かったり肩が大きかったりして、正直着にくいんですよ。
若い頃は無理して着ていましたけど、その雰囲気を今の形に落とし込めないか、というのはずっと考えてきました。
あとは「30年後にヴィンテージになれるものづくり」。
これが普通だと思っています。
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“普通”という言葉の中に、これだけの前提と思想が詰まっている。
その定義に触れたとき、GYLGの革ジャンの見え方が、少し変わるような感覚がありました。
素材|革ジャンの本質
ここからは、より具体的な話へ。
革という素材に対して、どのような考えを持っているのか。
そして、GYLGの革がどのように作られているのかについて伺いました。
KENGO:
GYLGの革について、もう少し詳しく教えていただけますか?
Jesse:
自分の理想としては、80年代後半から90年代のアメリカのシボ革なんですよ。
その革がしっかり経年変化するように、いちからオリジナルで革を作っています。
原皮や鞣し、染めの工程まではLOADEDの時とほぼ同じですが、仕上げの部分は少し変えています。
オイルをたっぷり入れて、熱を入れて、あえてシボをプレスしています。
あと、バタフリも通常では考えられないくらい入れて、かなり柔らかく仕上げていますね。
KENGO:
実際に触らせていただきましたが、かなり柔らかいですよね。
Jesse:
そうですね。
ただ、着ていくとオイルが抜けて、だんだんハリが出てくるように設計しています。
もちろんオイルを入れれば元に戻るんですけど、そのまま着ていても良い表情になります。
銀面もかなり強く仕上げているので、一般的な革と比べると、耐久性は高いと思います。
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柔らかさと、堅牢性。
相反する要素のようですが、そのバランスこそが革ジャンの本質なのかもしれません。
問題提起|違和感の正体
ここからは、少し踏み込んだ話に。
現在のレザージャケット業界や、ユーザーに対して感じている違和感について伺いました。
KENGO:
今のレザージャケット業界やユーザーを見ていて、強く違和感を覚えるのはどんな部分ですか?
Jesse:
例えば、タンニン鞣しの茶芯は良くて、クロム鞣しは安物…。
みたいな風潮には強い違和感がありますね。
革なんて適材適所でしかないと思っているので。
悪い革なんてそうそう無いんですよ。
あと「〇年で仕上がります」みたいなエイジングの打ち出しは、正直好きじゃないですね。
数年着ただけで革が極端に柔らかくなって、肘が伸びて型崩れしたり、銀面が剥げたり。
あれは自分からしたら、ただの不良品です。
KENGO:
革ジャンの本質からズレている、ということですか?
Jesse:
そうですね。
ヴィンテージって、何十年もかけてあの表情になっているわけじゃないですか。
それを数年で再現した後、その革ジャンは何年着られるのか?って考えてしまいます。
この先、(中古市場に)襟や脇がボロボロになった革ジャンが増えていくんじゃないかと思いますね。
せっかくレザーというサスティナブルな素材を使っているのに、使い方としてはもったいないなと感じています。
KENGO:
確かに、昨今は“インスタントな経年変化”が求められている印象もあります。
Jesse:
この業界に長くいるので、色々なテストもしてきました。
タンニンの素上げが雨にどれくらい強いのか、とか。
お湯がかかったときにどうなるのか、とか。
そういう特性を分かった上で、革ジャンとして成立しているのか。
そこは考えるべきだと思います。
革って、塩分とかで繊維が硬くなって崩れていくので。
そういうところまで含めて設計しないといけない。
自分の中では、革ジャンは“タフであってほしい”という思いがありますね。
そういった意味でも、LOADEDの頃と同じ下地を使ったGYLGの革ジャンに関しては、「10年着たらこうなりますよ」っていうエビデンスが取れているんですよ。
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“経年変化を楽しむもの”という認識の裏側で、見落とされがちな“革ジャンの前提”。
長く着るための設計。
素材としての適材適所。
そのどれもが、本来は当たり前のことなのかもしれません。
未来|革ジャンとの向き合い方
ここからは、これから先の話。
革ジャンという存在が、これからどうなっていくと面白いのか。
そして、どのように向き合っていくべきなのかについて伺いました。
KENGO:
今後、革ジャンの楽しみ方として「こうなったら面白い」と思う未来像はありますか?
Jesse:
例えば、古着屋で買った1万円のパキジャンが、ある人にとっては最高の一着になることもあると思うんですよ。
革ジャンって、そういう世界だと思っていて。
ステータスとか、世の中の評価とか、他人の目とかじゃなくて。
「自分はこれが好き」で完結するようになったら、面白いですよね。
あと、革ジャンを買ったときにやる“皺入れの儀”みたいなのも、正直ちょっと違和感がありますね。
ああいうのが無くなれば、もっと気軽に楽しめる人が増えると思うので。
KENGO:
より自由に、純粋に楽しめる状態が理想ということですね。
正直なところ、少し意外でもありました。
GYLGはどちらかというと、選び手側にもある程度のスタンスが求められるブランド、という印象があったので。
Jesse:
うちの場合、販売の仕方としてはハードルが高いと思うんですよ。
アトリエまで来てもらって、自分から直接じゃないと買えないので。
ただ、そこを越えて来てくれた方には、基本的にウェルカムでいたいと思っています。
自分の作るものに共感してくれる人には、ちゃんと向き合いたいので。
実際、革ジャンのことを全く知らない方から問い合わせをいただくこともあります。
そういう方には「ぜひ来てください」とお伝えして、革ジャンのことをいちから説明しています。
KENGO:
初めての一着としてGYLGを選ばれる方もいるんですか?
Jesse:
いますね。
「これが一番ビビッときたんです」って言われると、正直びっくりはするんですけど(笑)
でも、そうやって直感で選んでもらえるのは嬉しいです。
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“正解”ではなく、“納得”。
誰かの基準ではなく、自分の感覚で選ぶこと。
その積み重ねが、革ジャンとの関係性をつくっていくのかもしれません。
締め|「いい革ジャン」とは何か
最後に、最もシンプルで、最も難しい問いを投げてみました。
「いい革ジャンとは何か?」
KENGO:
Jesseさんにとって、「いい革ジャン」とは何だと思いますか?
Jesse:
自分は、“一生モノの革ジャン”は存在しないと考えているタイプです。
一生着ることはできると思うんですけど。
20代の頃に着ていた重くて硬い革ジャンを、50代になっても着るかと考えたときに、自分の中では答えはNOだったので。
その上での自分なりの答えとしては、
デザインが良いことを前提に、
フィッティングやいろんな要素を含めて、
“ライフステージに合っているかどうか”
これが一番大事だと思っています。
KENGO:
すごく共感します。
僕自身も、子育てをきっかけに、服の選び方や価値観が少しずつ変わってきました。
Jesse:
そうですよね。
自分も子どもが生まれたときは、あまり革ジャンを着ていなかったですし、その時期はジッパーが少ないものを選んでいました。
年齢を重ねると、体も変わるし、似合うものも変わってくるので。
「今、自分がどのステージにいるのか」を考えることは大事だと思います。
最終的には、出かけるときに自然と手が伸びる一着。
それがあればいいんじゃないかなと思いますね。
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“長く着られるか”ではなく、
“今、着たいと思えるか”。
その感覚の積み重ねが、
結果として長く付き合える一着になる。
明確な正解があるわけではないが、
ただ、ひとつ言えるのは、“自分にとって必要なものが残る”ということ。
そのシンプルな基準こそが、
「いい革ジャン」を見極めるひとつの答えなのかもしれません。
補遺|GYLGのこれから
最後に、ブランドとしてのこれからについても、少しだけ伺いました。
KENGO:
今後、GYLGとしてどのように展開していくイメージをお持ちですか?
Jesse:
この仕事を大きくしようとは思っていないんですよ。
ライフワークに近いものなので、
この先も、自分のペースで続けていけたらいいなと思っています。
これくらいのペースで、自分らしく続けていければいいというか。
あまり“仕事”という感覚に追われたくないですし、「売らないといけない」という感覚にもなりたくないんですよね。
うちの革ジャンを欲しいと思ってくれる人に、買ってもらえればいい。
ブランドとお客さんが、フィフティ/フィフティな関係でいられるのが理想ですね。
(Bright Silver of LOADEDのアイテム)______________
広げることよりも、続けること。
その選択には、
これまで語られてきた価値観や経歴が、そのまま表れているように感じました。
Jesse:
最終的に、革ジャン屋の爺さんになれたらいいですね(笑)
冗談交じりで出てきた言葉。
その言葉は、すべてを物語っているように感じました。
GYLGのオフィシャルサイトはこちら
https://gylg13.com/
GYLGのインスタグラムはこちら
https://www.instagram.com/gylg2025tokyo/






























