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【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

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【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!革ジャンの雑学

こんにちは、KENGOです。

今週は革ジャンにも深く関わる“タンナー”に関するお話をお届けしたいと思います。

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

2024年振り返りの内容でも少し触れたのですが、実は昨年10月 姫路のタンナー“株式会社山陽”さんに行ってきました。

今まで僕が行った中でも最大規模のタンナー。
初めて見る設備やその光景に、終始興奮が止まりませんでした。

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

今回はそちらで聞いたお話しや学んだこと、そして日本のタンナーがどういったものかっていうところを共有したいなと思います。

僕たちがいつも触れている“革”は、どのような工程で作られているのか?
そしてピット槽で鞣された革ってどんなものなのか?

ぜひ最後までチェックいただけると幸いです。

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国内トップクラスの老舗タンナー“山陽”

革ジャン開発の裏側に潜入!iameの新作が凄いことになっています…

今回訪れたタンナーは、創業110年以上の老舗タンナー“株式会社山陽”
革の聖地である兵庫県姫路に工場を構える、牛革専門のタンナーさんです。
(日本の牛革生産の約7割は兵庫県で作られているそうです)

業界ではかなり有名なタンナーさんのようで、国内シェアも相当高いんじゃないでしょうか。
実際に見学させていただいた中でも、誰もが知っている有名ブランドの名前がいくつも出てきました。
きっと皆さんの身の回りの革製品も、実は山陽さんで作られた革が使われている…なんてことも往々にしてある話だと思います。

タンナー取材(山陽)

ちなみに山陽さんは、あの株式会社栃木レザーとも資本提携されているそうです。
鞣し剤のレシピなんかもほとんど一緒なんですって。

 

業界の歴史を感じる施設

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

山陽さんに足を踏み入れてまず思ったのは、「めちゃくちゃ広い」ということ。
敷地面積はなんと1万坪と、国内のタンナーの中でもトップクラスの規模感。
これまで3つのタンナーさんに訪問したことがありますが、ダントツに広いです。

後ほどお見せしますが、敷地面積が広いぶん内部の設備も充実。
聞くところによると、国内で初めてクロム鞣しの量産を開始したタンナーは山陽さんだそうです。

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!(戦時中に建てられたレンガ壁)

さすがは創業110年以上ということもあって、当時の時代背景を感じるような風景が所々に残っていました。

皮革産業というのは、もともと軍事産業の一角。軍事用品には欠かせない皮革を生産していたわけです。
山陽さんでも、もともとは兵隊さんの靴やベルトを作っていたんですって。

 

革ができるまで…

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

ここからは山陽さんでお聞きした内容を基に、革ができるまでの工程をざっくり簡潔に紹介していきたいと思います。
(今回はピット鞣しで作製する革の手順の一例です)

原皮保管倉庫

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

こちらは原皮の保管倉庫
塩漬けにされた状態で送られてくる原皮を冷蔵保管する場所。保管倉庫を持っているタンナーのほうが少ないらしいです。
山陽さんでは主に、北米やヨーロッパから原皮を調達しているらしいです。

戻し

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

まずは塩漬けした原皮を元に戻すため、水と薬品を入れてタイコ(ミキサードラム)で回します。
1回で200枚くらい入れて、2~3時間ほど回すらしいです。

フレッシング

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

皮の裏面に付着している不要なもの(油など)を削り取る工程。
ちなみに取り除いたコラーゲンなども専用業者に渡して、ちゃんと転用されるらしいです。

脱毛・石灰着け

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

石灰水を使って毛などを溶かし、皮を柔らかくしていく工程。
石灰の量によって仕上がる革の風合いが変わるそうです。(これははじめて知りました)
この石灰のレシピもタンナーによって異なるようです。

分割

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

バンドナイフという機械を使って、不要な部分を取り除き大まかに厚みを整える作業。

ピット槽なめし(前鞣し)

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

ここから鞣し(今回はピット鞣し)の工程に。
背割り(半分に裁断)した皮をピット槽を使って鞣していきます。

ピット槽は深さ3mほどあるプールのような槽。
ずらっと24つの槽が並んでおり、1度に70枚ほどの皮を鞣すことができるそうです。

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手前の槽にはタンニン濃度の薄い液が入っており、まずはこちらの槽に1~2日ほど漬け込みます。
これが前鞣しです。
(濃度の濃いところにいきなり浸けても皮にタンニンが入らないらしい)

タンニンの原料はタンナーによって異なるのですが、山陽さんではミモザの樹液パウダーを入れているそうです。

本鞣し

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

いよいよここから本鞣し
前鞣し処理を終えた革を、タンニン濃度の濃い槽に移し替えます。
山陽さんでは移し替えはこの1度のみ。
ここから約1ヶ月間タンニンの入った槽でじっくり鞣していくのです。
ひたすら浸けっぱなしではあるものの、タイマーで定期的に皮を揺らすことで均等にタンニンを入れています。

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

またタンニンの濃度を維持するため濃度チェックを行ったり、腐らないよう水を交換したりもしているそうです。
※槽が限られているので、1ヶ月当たりの生産数量は150枚ほどが限度。

ちなみにこれは余談ですが、
栃木レザーではピット槽が160槽あるみたいです。

乾燥(2~3週間)

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

続いて鞣し終えた革を乾燥させていきます。

ヌメ革(ピット鞣しの革)はデリケートなため、扇風機の風をあてて自然乾燥をさせます。
特にタンニン鞣しの革は急激に乾燥させると割れてしまうようです。
なんと乾燥にも2~3週間かかるそうです。

染色・加脂

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

続いては太鼓を使って染色加脂していきます。
仕上げる革に応じて、染料だったり油剤などを入れ、タイコで回します。

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

ピット鞣しの工程からは脱線しますが、
コンビ鞣しの場合は、クロムを抜くためこの工程でタンニン剤を混ぜて染色を行うそうです。
コンビ鞣しでもタンニンの割合は革によってピンキリだそうです。

塗装

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

ここでは塗装の工程です。
いわゆる顔料染めと呼ばれる製品の革はこの工程で塗装していきます。
丘染めの場合は染色の工程が無く、この塗装のみで仕上げられます。
顔料のミストを吹きかける要領です。

乾燥

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

再度こちらでも乾燥の工程に入ります。
ここでもピット鞣しの革は時間をかけて自然乾燥になります。
(クロム鞣し革は専用の機械で乾燥させます)

その他加工

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

いよいよ最終仕上げ。
要望に応じて、様々な仕上げ加工を行います。
艶だし加工、アイロンや型押し加工、銀むき(バフィングやペーパーがけ)、ワックス仕上げなども行うそうです。
この最終工程で革の表情がガラッと変わります。

最終検査

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

全ての工程を終えると、ミスや抜けがないかの最終検品が行われます。
ここまで手間暇をかけても、最終的にAランク(キズやシワ、血筋の少ないもの)として出荷される革は7割りほど。
いかに革という素材が、いかに希少で手のかかったマテリアルだということが分かります。

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

ご覧いただいたのは大きな工程の一部で、細かく見ていくと更にいくつもの工程が加わります。

一般的な鞣しの工程は、概ねの流れはこのような感じです。
ただタンナーさんによって工程の手順が違ったり、作業内容そのものが異なったりします。
以前ご紹介した、オールマイティさんなんかはその最たる例ですね。

 

タンニン鞣しの最高峰、ピット鞣し

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

ここ山陽さんの特徴として挙げられるのは、“ピット槽を保有している”ということ。
つまりピット槽を使った、いわゆる“ピット鞣し”に対応したタンナーさんなのです。
(山陽さんでは、タンニン鞣しは全てピット槽で行っています)

実は現在日本でピット槽があるタンナーさんって、もう数えるほどしか存在しないんだとか。
僕も初めてピット槽を生で見ました。

なぜピット槽を保有しているタンナーが少ないかというと、ピット鞣しは非常に手間暇とコストがかかる手法だからだそうです。

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

一般的なタンニン鞣しは“タイコ”と呼ばれる機械(グルグルと回る巨大な樽)を使い、1〜2日ほどで革を鞣します。

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

一方ピット鞣しは、タンニンが入ったプール槽に革を漬け込み、1ヶ月間じっくり時間をかけて革を鞣すという手法。
かける手間と時間が圧倒的に異なるというわけです。

つまり、昨今の皮革業界の情勢やビジネス的な目線で考えると、“ピット鞣し”はとても非効率な手法
だから実施しているタンナーさんが少ないというわけですね。

 

ピット鞣しとタイコ鞣しの違い

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

ではなぜそんな非効率な手法ながらも、山陽さんではピット鞣しを続けているのでしょうか。

答えはとてもシンプル。
ピット鞣しの革でしか表現できないクリエイティブがあるからだそうです。

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

具体的にピット鞣しの革と、一般的なタンニン鞣しの革とでは仕上がりがどう違うのでしょうか。
山陽の方曰く、その違いは“ハリと堅牢性”
そして“経年変化”にあると言います。

ピット鞣しはハリが強く堅牢性が高い

生産工程を聞いて分かる通り、ピット鞣しで仕上がった革にはタンニンの成分が多く含まれます。
その分、強いハリと堅牢性が備わるというわけです。

実際にピット鞣しで仕上げたヌメ革を触らせていただいたのですが、板か?ってくらい硬くハリが強く強靭な下地に仕上がっていました。
(ある程度加脂しないと、畳んだだけでパリッと割れてしまうそうです。)

またタイコで革を回す一般的な鞣しに対し、ピット鞣しは必要最低限のアクションしか与えないため、繊維が解れないという理由もあるのだとか。

経年変化にも違いが

「タンニンを多く含んでいる」という理由にも付随するのですが、ピット鞣しの革は“経年変化”も非常にきれいに出ると言います。

ハリとコシが強いので、着用によるシワが定着しやすく、よりダイナミックなエイジングを楽しめる傾向にある(鞣し後の加工やオイル量にもよる)そうです。
さらには摩擦による光沢の出かたも非常に綺麗だと言います。

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

この辺りはですね、僕が今回オーダーした革ジャンもピット槽鞣しの革を使っていますので、追って比較検証したいと思っています。

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

その他にも、コバ面(断面)に大きな違いが出るようです。磨くだけできれいに光沢感が出るため塗料などを塗る必要がないのだとか。
(革ジャンにはコバ処理がされることがほぼないですが…)

膨大な時間とコストがかかる分、結果として類を見ない素晴らしい革に仕上がるということですね。

その他にも山陽さんでは、様々な加工技術や染色技術などを行なっていました。
どの工程1つとってもちゃんと人の手が加わっており、まさに“職人技術”と呼べる域。

ピット鞣しに限らず、“革”っていうのは本当に手間暇かけて作られているんだなと、再認識することができた一日でした。

株式会社山陽の皆さま、ありがとうございました!

 

まとめ

【タンナー取材】老舗タンナー“山陽”を見学してきました!

といことで今週は『タンナー山陽さん』に行ってきた時のお話でした。

今回共有したかったのは、
「山陽さんがすごい!」とか…
「ピット鞣しの革が絶対いい!」とかって話じゃありません。

僕たちが愛用しているの“革”っていうのは、これだけ手間暇かけて作られているということ。
これを僕含めて皆さんに、改めて感じていただければなと思い共有させていただきました。

タンナー(株)オールマイティに行って来た

もちろん国内にも様々なタンナーがあり、技術も日進月歩しているはず。ですので今回僕が聞いた内容、書いた内容が全てではないはずです。

あくまでも、“革に関する豆知識の1つ”として、楽しんでいただければと思います。

実のところ今回のタンナー見学は、僕が普段やっている仕事の一環で訪れました。
なのでここではお出しできない(であろう)情報などもあります(笑)

株式会社山陽では月に一度、一般見学できる日があるそうなので、気になった方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

それでは今週はこのあたりで。
最後までご覧いただきありがとうございます!



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