こんにちは、KENGOです。
SNSなどでもチラッと上げていたのですが、先日とあるタンナーさんにお邪魔してきました。
僕自身タンナーに足を踏み入れたのは数年ぶり。
やはりタンナーというのは、私生活ではなかなか味わうことのできない特別な空間だと改めて感じました。
そんなわけで今週は、僕がタンナーで見て感じたことをお話ししたいと思います。
タンナーではどのようにして革が作られるのか。
そして職人さんはどのような想いを革にのせているのか。
この記事を通じで、更に深く革ジャンの魅力を知っていただければ幸いです。
ぜひ最後までチェックしてみてください。
タンナーってどんなところ?
本題に入る前に、“タンナー”について簡単にご説明します。
タンナーっていうのは動物の“皮”を鞣して、製品の素材となる“革”にする製革業者を指します。
一般的にタンナーは、食肉用から出た動物の皮(いわゆる原皮)を仕入れ、そこから塩漬け〜表面の処理~鞣しの作業を行います。
さらに必要に応じて、加工や染色などを行い製品となる革を作ります。
(一部鞣し専門のタンナーもあるそうです)
タンナーの主なビジネスモデルは大きく分けて2つ。
自社ブランド製品(オリジナルの革)を製造し、メーカーに販売する。
もしくは問屋に卸すというケース。
もう1つはお客さん(取引先)の要望に合わせた革を、いちから製作して販売するというケース。
いずれにせよBtoBビジネスがメインなので、基本的には個人がタンナーから直接革を購入することは難しいようです。
(株)オールマイティ
今回見学させていただいたのは、姫路は花田にあるタンナー“株式会社オールマイティ”さん。
姫路駅からタクシーで10分ほどの場所に位置します。
そして今回お話しをお伺いさせていただいたのは、株式会社オールマイティ 会長の水瀬さまです。
(オールマイティ/水瀬さま)
失礼ながら僕はオールマイティさんの存じ上げませんでしたが、業界では有名なタンナーさんなんだとか。
僕たちが知るような、数々のレザーウェアブランドの革もこちらで手がけています。
例えば、イサムカタヤマバックラッシュ。
バックラッシュの人気シリーズであるジャパンカーフレザーは、15年前に片山さんからの依頼を受けて試行錯誤の末、生み出したレザーなんですって。
それ以降、バックラッシュとはずっとお付き合いがあるそうです。
水瀬さん曰く「片山さんは(革への拘りが)異常だ…」とのと。(笑)
もちろんいい意味でですよ。
バックラッシュ好きからすると、正に聖地とも呼べるスポットかもしれませんね。
実際にバックラッシュのジャパンカーフ(製品染め前の状態)も拝見させていただきました。
これはなかなか貴重です。
コンパクトなタンナーならではの強み
僕がオールマイティさんの作業場に入っての第一印象は、「意外と小規模だな」というものでした。
以前、別のタンナーさんにお邪魔したことがあったのですが、規模はそこの約1/10以下くらいでしょうか。
ただこの“コンパクトな規模感”こそが他のタンナーとの差別化であり、オールマイティさんの魅力でもあるのです。
16年前、「大量生産の時代が終わる」と感じた水瀬さん。
当時 売上100億円規模のタンナーに勤めていたそうですが、“少量ずつ革を鞣せるタンナーが求められる時代がくるだろう”と考え、独立して立ち上げのが株式会社オールマイティ。
当時としてはあり得ない、1枚単位から革を鞣せるシステムと設備を整えたそうです。
実際に工場の規模だけではなく、革を鞣すタイコのサイズもかなりコンパクトな設計になっています。
例えば他のタンナーさんで革の作製を依頼すると、“ミニマム50枚から”というタンナーさんも珍しくはないそう。
つまり新規で立ち上げたブランドが、オリジナルの革を作ろうと思っても非常にハードルが高いというわけですね。
また1枚ずつ鞣せるということは、失敗した時のリスクが最小限に抑えられるというメリットも。
だからこそここオールマイティさんでは、新しい技法を取り入れ実験的な革の製作にも柔軟に対応できるのです。
そしてその結果として、“革”に対する探究心や拘りの強いブランドさんが集まってきているというわけです。
そういった背景もあり、オールマイティさんで製作された革っていうのは99%がオーダーメイドのオリジナル革なんですって。
基本的に革問屋さんにも出回っていないらしいです。
余談ですが、、、
タンナー工場の規模自体は割とコンパクトとは言え、設備投資に6,000万くらいかかったそうですよ。
恐ろしい…
オリジナリティ溢れる革
今回は週末にお伺いさせていただいたということもあって、実際に工場が稼働してる様子は見れませんでした。
ただ水瀬さんから解説していただきながら、製作途中の革も含めて色んな革を見せていただきました。
本当に多種多様な革がありましたが、特に印象に残っている革をいくつかご紹介します。
猪(いのしし)の革。
ハリが強く力強い風合いのレザーでした。
ジャケットにも使用できるそうです。
ジビエの熊革。
熊の革を使った革ジャンがあることは知っていましたが、こうして実物を見るのは初めて。
意外ともっちりとしていて、初めて見るタイプの革でした。
ところどころに見られる傷からは、生前の気性の荒さがうかがえます。
続いてこちらの革。
これ何の革かわかりますか?
海亀の革です。
僕は初めて見ました。
面がかなり小さいのでメガネケースやチャームなどの革小物に使用されるようです。
革の種類もさることながら、多種多様な染色技術もお持ちのようです。
こちらは高級墨を使った“墨染め”と呼ばれる染色方法を用いた革。
ベースの色の上から墨を重ねて塗り、グラデーションがかったような味のある色味になります。
これらの革の製作秘話を聞いていく中で、水瀬さんの革に対する熱い想いや、革ができるまでの苦悩なんかを知ることができました。
僕には想像もできないほどの知識と経験、そして膨大な時間をかけて、唯一無二の革が生み出されるわけです。
昔ながらの伝統的でアナログな技術を駆使している反面、実は緻密に計算された化学的な知見も必要不可欠であるということ。
まさしく“職人技”と呼ぶに相応しい技術だなと感服しました。
いただきますの精神
最後に…
水瀬さんと雑談をさせていただいていた時の会話で、特に僕の心に残ったお話しをしたいと思います。
今回の記事で、僕が一番皆さまにぜひ読んでほしい内容です。
オールマイティという社名の下、どんな無理難題を投げられても“まずはトライしてみる”という姿勢でタンナー業を営んできた水瀬さん。
しかし過去に唯一断った案件があったそうです。
それは、ヌートリアの皮を鞣してほしいという依頼。
つまり“食用ではない動物の革を製作してほしい”という案件です。
ヌートリアは、日本の自然環境に大きな被害を与える特定外来生物に指定されています。
しかし例え害獣であろうとも、食肉用の副産物として出た皮でしか製品を作らない。
どんなことがあろうとも、その信念は絶対に貫いてきたそうです。
水瀬さんはこのように教えてくださいました。(※水瀬さんのお言葉を僕なりのニュアンスで解釈しています)
「“いただきますの精神”は日本人ならではの文化。
そしてそれは“食”という形で頂くだけではなく、その生き物の命を余すことなく頂戴するということ。
それが“いただきます”という精神の本質である」と。
僕たちも認識している通り、皮革製品は副産物です。
しかし衣類だったり靴だったり、製品化されたものしかみていない消費者は、“いただきますの精神”が薄れてしまっているのではないでしょうか。
もちろんそれは僕もしかりです。
“いただきますの精神”。
これは皮革産業に関わる職人さんだけではなく、エンドユーザーである僕たちももう少し意識すべき精神なのかもしれない。水瀬さんの言葉を聞いてそう思いました。
生命の力強さ。そして時に生々しさすらも感じる革というかけがえのない素材。
革の本質的な魅力を理解することで、もっともっと革ジャンを好きになることができるのかなと感じました。
まとめ
ということで今週は『タンナー (株)オールマイティ』へお伺いし、そこで僕が感じたことをお話しさせていただきました。
ちょっと語弊があるかもしれませんが…
僕を含めた革ジャン消費者からすると、革ができるまでの背景ってぶっちゃげあまり関係というか…そこまで縁のない領域の話だと思うんですよね。
もちろん興味関心を持つ人は一定数いるとは思いますが。
ただ実際に職人さんの価値観に触れることで、革ジャンって本当にかけがえのないアイテムなんだなって再認識する事ができました。
加工や染色ひとつとっても、ほんとビックリするくらい拘りと手間暇が掛かっています。
しかもそれは、この職人さんにしかできないっていう…ものすごく属人的な世界なんですよね。
そういう背景を知るのと知らないのとでは、同じ革ジャンを見た時でも捉え方が変わってくるような気がしませんか。
だから何だって話なんですが…
ただここで聞いたことや感じたことを、革ジャン好きの皆さんにも共有できればなと思い、今回記事にさせていただきました。
すみません…いつもとは違った形式だったので、なかなか上手く言葉にできず拙い内容になってしまったかもしれません。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
もしよかったら皆さまのご感想なども頂けると嬉しいです。
そして快く取材をさせていただきました、株式会社オールマイティの水瀬さま、本当にありがとうございました!
それでは本日はこのあたりで。
最後までご覧いただきありがとうございます!
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