こんにちは、KENGOです。
皆さん、洋服の“パターン”ってご存知でしょうか。
パターンとは、衣服を制作するときの原型モデル・設計図となる“型紙”のことです。
そしてそのパターンを設計する職人さんのことを“パタンナー”といいます。
もちろん僕たちが愛用している革ジャンも、パタンナーさんが作製した型紙から作られているわけです。
では実際に革ジャンのパターンがどういう風に作成されているのか!?
…これ、めっちゃ気になりませんか?
そんなわけで今週は、『革ジャンを作るパタンナーさんの世界』を覗き込んでいきたいと思います!
実は少し前に、あるレザーブランドのパタンナーさんにお話しをお伺いする場を設けていただきました。
「革ジャンってどのようにして作られているのか?」
「パタンナーさん視点で見た“良い革ジャン”の定義とは?」などなど…
“革ジャンづくり”に関する様々な疑問をぶつけてきました。
今回はそのインタビュー内容を対談形式でご紹介していきたいと思います。
この記事を見ていただくことで、革ジャンに対する愛がさらに深まるはず。
ぜひ最後までチェックしてみてください!
はじめに
インタビュー内容をご覧いただく前に、少しだけ事前情報をお伝えしておきます。
プロダクトの良し悪しを決める“パターン”
まず洋服の“パターン”について簡単にご説明しておきます。
パターンとは、洋服のデザインの基礎となる設計図のようなものです。
作製されたパターン(=型紙)を基にして、生地を正確に裁断し縫い合わせることで洋服が完成します。
そしてこの型紙作製(パターンメイキング)によって、完成する洋服の良し悪しが決まると言っても過言ではありません。
パターンっていうのは、単にサイジングだけではなく着用時のシルエットにも大きく影響してきます。
つまりパターンを設計するパタンナーさんは、それだけ大きな役割を担う存在ということなのです。
A LEATHER専属のパタンナー
今回お話しを聞かせてくださったのは、レザープロダクトブランド“A LEATHER(エーレザー)”の専属パタンナーを務める山岡力哉さん。
(山岡力哉 氏)
パタンナー歴25年になる熟練の職人さんです。
それと同時に、山岡さんはA LEATHERの立ち上げメンバーの1人でもあります。
今回はいちパタンナーさんとして、幅広い視点から質問に答えていただきました。
そもそも業界的に、ブランド専属のパタンナーさんって多くはないそうです。
フリーランスでパタンナーをされている方も多いため、ブランド側も外部委託していることも珍しくないんだとか。
そういった点においても、山岡さんのように川上から川下まで生産工程を見届けているパタンナーさんのお話ってすごく貴重だと思います。
僕の拙い構成で読みづらい点もあるかと思いますが、ぜひ最後までご一読いただけますと幸いです。
(※今回2ページ構成になっています)
革ジャンづくり携わる、パタンナーの仕事とは?
「デザイナーのイメージを形にするパタンナー」
赤字…KENGO
黒字…山岡氏
―よろしくお願いします。
まずは、“パタンナーについて教えてください。パタンナーさんはどういったお仕事をされているのでしょうか。
パタンナーっていうのは、いわゆる“カッティング”を設計する職人です。
今ではCADを使う方法が主流ですが、基本的には紙に原寸大の設計図(型紙)を書く仕事になります。
デザイナーのイメージを読み取って、(洋服の)シルエットを作ることが大きな役割の1つです。
(専用のソフトで作成した設計図)
―なるほど。デザイナーさんの思い描く構想を具現化するための第一段階ということですか。
そうですね。デザイナーによっても伝え方っていうのは様々でして。
ニュアンスだけで伝える人。
ラフ画で伝える人。
デザイン画を描いて寸法まで具体的に伝える人。
デザイナーが頭で思い描いているものを、時にはそれ以上のものをどこまで汲み取れるかっていうのもパタンナーの腕にかかっています。
―それだけデザイナーさんとは近い距離感でお仕事をされているのですね。
面白いのが…例えば具体的な内容を示したデザイン画があるとします。
これを10人のパタンナーに依頼すれば、10通りの異なる型紙ができあがります。
デザイナーとの相性なんかもあるとは思いますが、良いパターンを作るにはパタンナーがデザインの本質を理解することがとても重要だと考えています。
―そこから次はどのような工程に進むのですか?
仕上がった型紙をもとに、裁断士さんそして縫製士さんへ指示を出します。
実はここもパタンナーとしてかなり重要な役割です。
裁断士さんや縫製士さんにもそれぞれ特性があるので。
「このアイテムはどの職人さんに依頼すべきか」、「職人さんに伝わるよう的確な指示が出せているか」などを考えて動く必要があります。
―パタンナーさんは作製に関わる職人さんたちを総括するポジションでもあるのですね。
さらには表地やファスナー、ボタンなど副資材との相性を判断するのもパタンナーや生産管理が担う場合もあります。
もちろんここでもデザインに対する理解、見聞が必要不可欠です。
僕も日本で手に入れられる資材は大体頭の中に入っています。
―すごい…思っていた以上に多岐に渡るお仕事なんですね。
「良いものを作るために―。パタンナーとしての責任感」
―パタンナー業の中で、強く意識していることを教えてください。
先ほどお話ししたように、“デザイナーのイメージを汲み取る”っていうところですかね。
この業界では「パタンナーはデザイナーを超えていけ」ってよく言われるんですよ。
―“デザイナーを超える”ですか?
つまりデザイナーがイメージしているもの、更にその上を超えるくらい良いものを目指して仕上げなければならないということです。
結局(デザイナーに)言われたままをやろうとすると、それ以下にしかならないというか…
なんかパタンナーロマンみたいな話になってくるんですけどね(笑)
そういう意識を持っていたりはしますね。
―深いですね。デザイナーさんの意図がわからない時もあったりするのですか?
ある程度の情報を貰えば、頭の中で形を描くことはできます。
ただどうしてもデザイナーの意図が読み取れない時もたまにあるんですよね。
そういう時は、(デザイナーの)価値観に触れてみます。例えば好きな音楽や好きな映画…あとは何を食べてるとかを聞いたりして。
―え!?デザイナーの食生活ですか?
そうです。
デザインって人生がベースなので。
その人の人生観を知ることで、イメージを引き出せることもあるんですよ。
―デザイナーさんとは本当に密な距離感でお仕事をされているんですね。
あとこれはレザーウェアに限ったことではないのですが、パタンナーは素材の特性を理解し“それぞれに合わせた設計を行うこと”が重要になってきますね。
例えば、Tシャツ、デニムジャケット、ナイロン、レザー。
これら素材が変わるとパターンの引き方も全く異なりますので。
―具体的にはどのように違うんですか。
シルエットはもちろんですが、使用するミシンもそれぞれ違います。
そのためシルエットを追求しつつも、ミシンが走りやすいラインや設計になっているのかっていうことを常に意識しながらパターンを引いています。
―なるほど。それは長年の経験があってこそのスキルですね。
もっと言うと、革の場合は動物の形をしているものをいかに効率よく裁断できるか。
パーツのサイズそれぞれを意識し頭の中でパズルしながらパターンを設計しています。
―すごい…僕には到底想像できない世界です。
「1人1人の技術の重要性が高いレザー職人」
―革ジャンを作る工程の中で、他の衣料品とは異なる点を教えてください。
これは主に縫製に関する内容なのですが、レザーウェアは“布帛(生地もの)”と“ハンドクラフト”の中間に位置します。
―と言いますと
例えば…、僕が今穿いているこのチノパン。
これを1本縫製するのに、だいたい5〜6台(種類)くらいのミシンを使用します。
量産の場合はそれぞれのミシンに担当者が付き、生産ラインを敷いて(作業を)流していく。つまり効率的な作り方が可能になります。
しかしレザーウェアはそれができません。
なぜかというと、ほとんどの場合が一台のミシンだけで仕上げていくんですよ。さらに1人で1着を全て仕上げる、“丸縫い”という方法で作られることが多いからです。
―革ジャンってとんでもなく手間暇がかかっているんですね。どこのブランドもそうなのですか?
ブランドにもよりますね。
例えば海外にある大量生産の下請け工場だとライン生産になります。
国内でも量産(1型20着以上生産)場合は、ライン構築というよりも2~3人での分担作業で効率をあげて生産するケースがほとんどです。
―そういった中で、A LEATHERではなるべくショートカットしない革ジャンづくりを採用していると。
基本的にはそうですね。
あと職人スタイルの違いも影響しています。
例えばアメカジベースのアイテムなど、厚手の革を力強く縫うことに特化した人。
柔らかいレザーや、ステッチをあまり使わず繊細に縫い上げるのが上手な人。
ウイメンズアイテムなど、見たことの無いようなデザインに対して縫い順序などを理解することに長けた人など。
職人さんによっても得意不得意があるので、アイテムごとに持ち前の技術を生かせる職人さんに振り分けて依頼しています。
そういった意味で言うと、レザーウェアは衣料品ではあるものの属人的な工程で作っているのでハンドクラフトに近い要素があるっていうことです。
―なるほど。やっぱり革ジャンはちょっと特殊なジャンルってことですね。
ですがこれはレザー職人、1人1人の技術の重要性が高いことを意味します。レザーの場合は関わる方がほんと“職人”なんですよ。
パタンナーと同じように、縫製職人の方々もパタンナーを超えてくることがあります。
その時は勉強になると同時に、こういった方々とものづくりができていることに対して誇りに思います。
―ほんと“職人の世界”ですね。もっと機械的に作られているのかと思っていました…
そして縫製と同じように重要なのが裁断です。
革は1枚1枚大きさが違い、傷があったりするので1パーツごと1枚ずつパターンにあわせて裁断します。
またスエードの場合は毛並みの方向を揃えないといけません。
さらに背中の部分と腹の部分とでは、1枚の革の中でも風合いや伸び率が全く違いますので。
僕自身このようなことをすべて理解し、適材適所に合わせて的確に組み立てれるよう心がけています。
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